Weekly_Sayonara_Sunday’s diary

週刊さよならサンデー。タイトルは少年誌四天王のパクりじゃなくてオマージュ。週刊とは名ばかりで書きたい時に随時更新。次回の先生の作品にご期待ください!

2015年10月5日~6日

10月6日の朝、さっきまで一緒に居た友人が亡くなるという衝撃的な出来事が起きた。
幸か不幸か、私は人生で同じ時を過ごした人間が死ぬという経験を片手で数えきれる程しかしてなくて、身近な人がそれも さっきまで一緒に居た人が亡くなったっていう事実を頭が上手く処理できなかった。
今まで私が経験した身近な死の中で一番密度が高いというか思い出・想い入れのある人物が彼だった。

夜から5人で集まりお酒を飲んだりご飯を食べたりしながら喋っていた。お互い生活環境が緩やかに変化して今でこそ珍しくなりつつあったが、馴染みのマンションで、馴染みの4人(家主と、彼と、今日の召集役の友人、少しも酒が飲めないのに彼らといると酔ってるようにテンションの高くなる私)+タイミングが合い居合わせた(家主の妹)1人と赤ちゃん(家主の妹の一歳半の息子)。慣れ親しんだ状況。いつものように喋って飲んで酔って。
それまでの睡眠不足がたたり家主は早めに就寝。赤ちゃんを眠らせてる自室へ。
シラフの私と妹、いつも通りに酔った彼と、体調不良の為いつもの酒豪ぶりが発揮出来なかった友人が残った。飲んだお酒の量は今までこのメンツで飲んでるのを見守ってきた中でも最少の部類。

彼は酔うと愚痴っぽくなったり邪魔くさく絡んだり、他人に直接的に乱暴な事はしないけど服を脱いだり謎の言葉を唱え出したりするような奇行をするタイプ。危険ではないけど所謂 めんどくさい タイプ。
普段は陽気で、気前が良くて、すぐ冗談を言ったり変な顔をしたり、ネガティブな意見もストレートに表現したりする部分もあるけれど心根が優しくて、自分よりも他人を優先させる人。
酔ってる彼の言うことは普段押さえてる本音の部分でもあるだろうし、また、お酒で変になってるだけで彼の本質ではないだろうとも思うし。この酔っ払いへの私の見解は彼に限ったことではないけど。

今回も酔ったときのお決まりのパターンで、奇声をあげたり大きな物音を立てたり、寝てる赤ちゃんを起こそうとしたりして、体調不良の為いつもほど酔えてない友人とシラフの私と妹で制していた。「やめろ」「やめない」「静かにしろ」「嫌や」の口論状態になった。「近所迷惑だから寝るか迷惑にならん場所まで行け」こんな主旨のやり取りで彼は部屋を出たり戻ったり、また口論を再開したりを何度かして外へ出ていった。私が追っても上手く連れ戻せる自信も無いし返ってややこしくなると思い、酔ってる彼を一番扱っている友人に任せた。後片付けをしながら待つ私と妹。妹は一足先に我が子と家主の眠る部屋へ。戻ってきた友人から聞いた彼の最後の状況は「マンションのゴミ捨て場で吐いて眠ってる」とのことだった。出すモノを出して危なくない涼しい所で眠ればスッキリ酔いも醒めて帰ってくるだろうと、騒ぎが一段落したことと、彼の現状に安心して眠った。

朝になりマンションを出ようと玄関を開けると同じフロアの廊下に警官が1人、下を覗くと4~5人の警官がいた。私は思わず 怒られる! と思って部屋に戻った。彼があれからまた大声を上げて暴れて近所の人が通報したと思ったのだ。慌てて隣で寝ていた友人のもとに駆け寄り警察が来てる、どうしようと言って起こした。暫くして呼び鈴が鳴り、呼び鈴で目覚めた寝ぼけ眼の家主を止めて 自分が対応する と友人が出てくれた。警官と友人が気になり家主と共に玄関へ近づくと彼のフルネームを告げる友人の声と「死亡してる」という警官の声が聞こえた。予想だにしないフレーズに混乱した。
警官が部屋に入ってきて彼の外見的な特徴にそっくりな人が階段の下で亡くなっていることを報告され、知り合いではないか?とデジカメで撮った遺体の顔写真を見せられた。彼だった。
4人、別々に事情聴取を受けた。私は自分の身元や昨日彼と別れるまでの状況に関する警官の質問に覚えている範囲で答えて、死因と、亡くなった詳細な場所と、彼は今どこにいるのかを尋ねた。死因は可能性が幾つか考えられるがまだ解らないということ、「階段の下」と言われていた場所の詳細な位置と、まだ彼は現場にいるということを教えてもらった。早めに済ませて貰ってマンションを後にした。信じられないというか冗談でしょ とかそんな気持ちでいっぱいだった。
マンションを出る際に遺体があるとされる場所を遠くから一瞬だけ見た。柱が有って肩から下しか見えないが上半身裸の彼が仰向けに横たわっていた。友人から最後に聞いたのと違う位置で、しかも半裸で固くて冷たいタイルの上で、真っ直ぐ仰向けで寝てる。まるで いつもの悪ふざけのよう。

マンションを離れてる間もやっぱり死んだなんて信じられなくて、漠然とした大きな不安がずっとあった。死んでるとは思えない。けど今朝の光景は何だったのか。あの状況に死に至る要素なんて一つも見出だせなくて、全く腑に落ちない。けどあの時 私が別の言動をとってればこんなふうにならなかったんじゃないか。死んだとは思ってないけど、"今日の別れ"の瞬間が口論状態ってことが、最後に一緒に過ごした時間が彼にとって確実に気持ちの良いものでなかったことが本当に悲しかった。以前にもあまり良い状況でないまま彼と別れ、避けたりしてた訳ではないけどそれから暫く会わなくなることがあったから。私のせいで とは思わなかったけど、違うことをしてたら結果は違ってただろうなと何回も考えたし、最後に一緒にいた時間の殺伐さに涙が出てきた。またね って約束してそれまで楽しい時間を一緒に過ごしていたかった。

あまりに腑に落ちず死が信じられない気持ちと、漠然とした不安、別れ際への後悔、それらが避けられるモノだった可能性。とんでもない居心地の悪さの中、心配してくださった葬儀関係のお仕事をされてるSNSで繋がりのある方に『「あの時ああしてれば」って一度思っちゃうとどんどんその気持ち膨らんじゃうから、お友達に喜ばれた事とか思い出しながらお別れの準備するのがいいと思う』とのアドバイスを貰った。このメッセージが心の支えというか、彼の死と向き合うことに臨むにあたっての私の方針になった。後悔してもしかたないし、むしろ自分のせいで誰かが思い悩むなんて、しかもそれが大切な友達であるなんて彼にとっては一番嫌なこと耐えられないことの類いだし、私は彼の死んだ今と これからに何がしてあげられるか考えることに時間と労力を使おうと思った。

彼の最後の最後に一緒にいた友人はしっかりしてるけど心の面でナイーブなところがあって、その立場だけで つらいと察するに余りあるけど、彼の繊細な性質、詳しくは聞いたことがないけれど過去にも大切な人を近くで亡くしてる経験があるようなのでそれにダブらせたりして本当に参ってるだろうなと予想してた。この日、来たメールの一通目は意外にも「大丈夫だったか?」と私を気遣うものだった。時間が経っていき友人の中で彼の死が現実味が帯びてきて…当たり前だけど、やり取りを重ねる毎に弱音や後悔の言葉でメールの文面が埋まってくる。そう思ってしまうことを否定しないこと(これは自分も同じで他人の事を言える立場でないから)、でもそれは彼が望んでいないということ、一緒に彼のためにこれから何が出来るかを考えたいということを繰り返し伝えた。

私と同じタイミングで彼と別れた家主の妹はすごく冷静で、いつかこういうことも起こるだろうなと思っていたという気持ちと、私と同じでリアリティーが伴ってないというのも相俟って割りと事務的な 今誰が何処で何をしてる という情報をたんたんと私に くれ続けた。